教育立国(5)~二つの職業人生と職業教育~
これまで述べてきた、経済の構造変化(知識社会化)は、いわゆるホワイトカラーの仕事に二極化をもたらす。仕組みを作る側と、その仕組みの上に乗って働く側である。
これは何を意味するのかといえば、
「会社に人生を委ねることができなくなった「大卒ホワイトカラー」という人生の安定度の低下」である。
ホワイトカラー業務の“仕組み化”は、企業の内部における組織特殊的人的資産、すなわち、“長期的な雇用関係を通じ、ある特定の会社においてのみ発揮できる技能を身につけた人材”の割合を減らす。いわゆるコア社員の割合が減ると言い換えてもいいだろう。ホワイトカラーの仕事が二極分化することを考えれば、必然的にホワイトカラーという道を選ぶことにリスクが伴うのである。
逆に言えば、大卒ホワイトカラー以外の職業の安定性が相対的に高まる。例えば接客に従事する人や、店舗の管理職、ライターなどフリーであることが当然の職業、手に技術をつけるような職業等は、汎用性が高く、ある職場や仕事を失っても、次の仕事を見つけやすい。弁護士、会計士、官僚、シンクタンク、マーケッター、コンサルタントなども、知識社会における新たな“職人”であろう。
従来から一つの組織で一生を終えることが予定されていなかった職業も多いのである。例えばホテルマンは、頻繁に職場を変えることでキャリアアップするのが当然とされている。一度しっかりとしたサービスの基本とホスピタリティの精神を身につければ、それはどのホテルへ行っても応用可能なものであり、即戦力として働くことができる。
ホワイトカラーとなることのリスクが上昇することで、組織への依存度が低い、これらの職業の安定性が相対的に高まるのである。これらの職業に従事する人をここでは“手に職”型の人材と呼ぼう。
職業教育のあり方を根本から変える必要がある。知識社会の中、仕組みを作り、差異を生み出す人材を目指す道を選ぶか、汎用性の高い能力を身につけていくか。こういった職業人生のありよう、職業観をリスクも含めて類型化し、ある程度の年齢に達した際にはしっかりと教育する必要があるだろう。
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