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2006年11月22日 (水)

社会のリスク化

これまで、即時的行為、手段的行為の比重の変化という観点から、日本人の人生観の変遷を見てきた。
縄文時代から、社会における予測可能性が次第に高まり、それとともに人は手段的行為に重きを置くようになったが、高度成長後(1980年代~)豊かさが絶頂に到達した後は、逆に即時的行為を重視する傾向が出てきたということであった。

それは社会に何をもたらしたのか。

即時的行為の定義をもう一度述べると、「行為とほとんど同時に目標の達成ないし満足を得ようとする行為」ということである。これを労働・仕事に置き換えてみるとどうなるだろうか。

それは、自分で思い描いたような職業に就き、思い描いたような内容の仕事をできるということを希望しているということである。現代の若者の多くはそれを“自己実現”と考えており、望ましい、当然のことと考えている。

これは、職業選択の自由が社会的にも経済的にも制限されていた時代とは180度異なる発想である。
しかし、かならず

希望や欲求の総和>実現の総和

となるわけであって、自己実現ができないというリスクが常につきまとう、不安定な社会となる。現実には自分の希望通りの仕事ができることは稀であって、そこで壁にぶつかった個人は自己不全感に陥るのである。

この点たとえば山田昌弘著「希望格差社会」などにくわしい。生まれた時の親の職業によって自分の職業もほぼ決まっていたような時代であれば、それ自体なんら不満を感じないのが通常である。しかし、現代では“自己実現”することがすばらしいし、当然であるという社会通念がある。そのような条件のもとでは、自己を実現できなかった場合のリスクを引き受けざるを得ないのである。

たとえば“夢”や“自己実現”を追うために、フリーターの道を選んだ者がそれを実現できなかったとき、40歳だったとする。そのとき彼はどうなるのか。絶望感から完全に無気力化してホームレスとなったり、逆に一生懸命働いても、極貧の状態、いわゆる“ワーキングプア”に陥るリスクがあるのである。

とはいえ、人間の精神活動の変化はとめることはできない。こうして「リスクを引き受けざるを得ない社会」が到来しているのが現代である。

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